カジノを合法化する統合型リゾート施設(IR)整備推進法案(カジノ法案)が衆院で可決され、参院で審議されている。日本では15年前からカジノ構想が本格的に議論され始め、民主党政権下の2010年に超党派IR議連が結成され、13年に安倍政権の下でカジノ法案が衆院に提出されたが、安保法の成立のために先送りされ、ようやく今国会で可決成立の見通しである。
カジノ法案については、ギャンブル依存症対策、反社会勢力排除、青少年保護などの面から反対論も根強い。既存射幸産業(公営競技、パチンコ)との競合問題もあるが、一方で先進諸国クラブと揶揄されるOECD(経済協力開発機構)加盟35カ国のうち、カジノを法律で認めていないのはノルウェーとアイルランドと日本だけだと指摘されてきた。
最終的には激増するインバウンドが追い風になって、カジノ法案が今国会で可決成立する見通しが高まっている。
カジノ法案が成立すると、第1号がどこに決まるかが大きな焦点になる。日本版IRは「大都市型」と「地方都市型」の2種類が想定されており、前者の投資規模は5千億~1兆円、後者の場合でも1千億~3千億円になると予想されている。すでに米国やアジアのカジノ運営会社が虎視眈々と投資のチャンスを狙っている。
大都市型の候補地としては、東京の台場、横浜の山下埠頭、大阪の夢洲などが取り沙汰されている。地方都市型は全国各地で名乗りが挙げられている。
北海道の場合にはすでに苫小牧市と釧路市が誘致に力を入れているが、新たに後志管内留寿都村も名乗りを挙げている。
留寿都村はルスツリゾートの近くに長期滞在できる温浴施設や大規模会議施設を建設する予定で、すでにマカオの大手カジノ運営会社が現地視察を行っている。道内の他の候補地についても、すでに各国のカジノ運営会社が現地視察を行っている。
マカオやシンガポールやフィリピンなどアジア諸国のカジノ産業が驚異的に成長した理由として中国人富裕層が主要顧客である点が指摘されている。中国人富裕層を満足させるためにはマネーロンダリング(資金洗浄)を含めて特別な金融システムが必要になるが、日本では対応困難と言われている。
そのため日本版IRでは外国人客よりも日本人客から稼ぐ必要があると予想されている。いずれにしても、日本版IRの行方に注目していきたい。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)